碧南市藤井達吉現代美術館 藤井達吉について

飾り 講演録「藤井達吉の芸術」【9】

愛知県美術館企画普及課長(講演時) 木本 文平氏

 こうした既成概念を超えた藤井の作品は、まさに現代アートですよ。もう空間を創出するインスタレーションそのものの何ものでもないと思いますよ。いわば、そういう自由な、豊かな発想の作家を生んだ碧南と致しましては、全国的に一世を風靡した藤井達吉を顕彰するだけじゃなくて、そういう自由に豊かな闊達な発想を持った作家を生んだこの町は、次の世代を生み出す要素を含んでいるのではないでしょうか。そういう碧南としましては、是非とも藤井達吉の芸術をバックアップして頂いて、次の世代、若い、昨今ちょっとお聞きしますと、小学校の学芸会か、演劇発表会に藤井達吉を稽古してやってみえるそうですけれども、それだけじゃなくて、実際にものがないとわからないですよね。本だけではわからない。美術てのは、ものがあって初めて感じるものがあるのです。最近その何と言うんでしょうか。バーチャルリアリティとか仮想空間とか、それはそれで映像なら映像でいいかもしれませんが、実際のものから受ける感動というのとは少し違うんです。この辺のところをよくご理解頂きまして、ただ創作劇だけでなく、実際のものを直に見えるそういうものを次世代を担う子どもたちに、そういう場というか、そんなのを与えてあげると、碧南というのは、それこそ21世紀の芸術の発信地となるのではなかろうか。
 まあ、とりとめのない話でどんどん来て参りましたが、もうお時間が迫っておりまして、最後にまとめて言うならば、藤井の評価というのは、今後ますます再評価が高まって来るであろうし、私も愛知県美術館を定年する前にもう一度、藤井達吉の大展覧会をやりたいと思っていますし、幸いなことに藤井達吉の所蔵家あたりからも、ある面全幅の信頼をおかれておりますので、横浜の西郷家からも、そして、神戸の芝川家からも、あんたなら任せるということを言われていますし、また、残された調査として、最近の調査で思っている、これは調査しなければいけないというのは、山形にも藤井さんというのはみえまして、山形トヨペットの社長の奥田さん、その奥田家にも藤井達吉さんの作品があるわけです。また、新潟の新発田にも、実は藤井さんの隠れたコレクター。これは、近熊次郎。近熊次郎というのは、かって土田麦僊の大コレクターとして名をはした人です。これは京都経由で入った作品なんですが、藤井さんの作品がどうもそこから散逸しているようです。その辺の調査をしなくてはいけないと思っていますし、残念ながら、私も総合芸術研究会の発展的解消ですね。資金的なバックアップがないですからちょっとやりづらくて・・・。
 後、どうしても調べなくてはならないのが、湯布院ですね。大分の。ここで戦後、竹細工で人間国宝になられた方。藤井さんの一言によって目から鱗ということで、新境地を開いて、最終的には国宝になられたと思いますが、湯布院の調査とか、米沢の調査とか、新潟新発田の調査とか、その他やり残したことが多々あります。
 ひとついいのは、調査というのは結構大変なんですが、楽しみもありまして、藤井先生は、本当はむずかしいことをいっぱい残してくれて、わからないことがいっぱいあるんですが、ひとつの楽しみは、あの方は温泉が大好きだったということで、彼が行ったところ、行ったところに温泉があります。夜は仕事をしませんので、昼間仕事をやって、夜はその温泉につかりたいです。そんなよからぬことを考えていますけれども、もう大体お時間になりましたので、この辺で話を終わらせて頂きます。どうも拙い話で申し訳ございませんでした。

碧南芸術文化振興会設立総会記念講演(講演者:木本 文平氏、期日:平成13年2月)
(『碧南藤井達吉芸術文化現代』第1号〜第3号を補訂)

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